『不況心得十訓』


「不況心得十訓」


一、不況といい好況といい人間が作り出したものである。人間それを無くせないはずはない。

二、不況は贅肉を取るための注射である。今より健康になるための薬であるからいたずらに怯えてはならない。

三、不況は物の価値を知るための得難い経験である。

四、不況の時こそ会社発展の千載一遇の好機である。商売は考え方一つ、やり方一つでどうにでもなるものだ。

五、かつてない困難、かつてない不況からはかつてない革新が生まれる。そしてかつてない革新からはかつてない飛躍が生まれる。

六、不況、難局こそが何が正しいかを考える好機である。不況の時こそ事を起こすべし。

七、不況の時は素直な心で、お互い不信感を持たず、対処すべき正しい道を求めることである。

八、不況の時は何が正しいか考え、訴え、革新せよ。

九、不景気になると商品が吟味され、経営が吟味され、経営者が吟味されてそして事が決せられる。従って非常に良い経営者のもとに人が育っている会社は好況の時はもちろん、不況の時にさらに伸びる。

十、不景気になっても志さえしっかりと持っておれば、それは人を育てさらに経営の体質を強化するチャンスである。

松下 幸之助